第3部 光の筋(7)
「凄いね」
光代がぽつりと呟いた。
朝里もいつしか光代に対する愛撫をやめて,携帯から漏れてくる,由利と男の激しいやり取りを聞いていた。
「結構,盛り上がっているみたいだね」
朝里も感心したように言った。
「さて,我軍はいかがいたしましょうか」
朝里は光代に,セックスをする気があるかどうか確認した。気のないセックスなら無理にしないほうがいい。義務感や惰性で最後まで行ってしまって,その結果,お互い満足がいかなければ,不満足感は後々まで残り,それを解消するのは多大の労力が要求される。それくらいなら,何もしないでおいた方がよい。そうすれば,それは飢餓感,未達成感となって残り,後で二人を燃え立たせるのに役に立つ。
朝里は過去の経験から,冷静に判断していた。朝里は既に由利と一戦交えていたし,再戦したい気持ちもあった。男は女と違って,何度も好きなだけ果てるわけにはいかない。そんな気持ちもあった。
「私は凄く刺激を受けてるわ。分かるでしょ」
光代はそう言いながら,とろりとした眼を朝里に向け,彼の手を股間に誘った。
光代のそこは太股から滴るのでは,と思わせるほど蜜が溢れ,彼女の受入態勢が完全に整っている事を朝里に知らせた。朝里はなお,2本の指を密の溢れる洞穴に差し入れ,内部の調査をした。
光代は朝里の指が側壁を掻きあげるだけで,体全体が振動するほど高揚していた。その一方で,光代は朝里の猛りに手を伸ばし,巧みに刺激を与えた。
朝里は光代の臀部から背中にかけて,手を這わせた。光代の背中は汗が噴き出ししっとり濡れていた。
朝里はそういう事なら,今日はお互いに満足できるだろうと思った。朝里は寝返りを打つようにして体を起こすと,光代の脚の間に正座した。脚を引き寄せ光代の胸のほうに押し上げると,覆い被さるように密着し,彼の猛りを光代の体内に押し入れた。光代の準備は万全であったので,猛りはするりと飲み込まれた。
「今日は,とっても気持ちがいいわ」
「それはよかった」
「あなた,すごく硬いわよ。これなら,もう一回,由利ちゃんとできるわよ」
「そりゃどうも」
「でもね。その前に私が吸い取ってあげる」
朝里が抽送を始めると,会話は途切れ,光代の喘ぎ声と朝里の呻き声だけになった。
携帯の向こうからは,由利と男の激しい情交の模様が洩れてくる。
由利達は知らないであろうが,朝里と光代は無意識のうちに,由利達と絶頂期を合わそうとしていた。
ほどなくその時が訪れた。
四人はそれぞれの満足感を感じていた。
由利の男は降って沸いたような話で,願ってもいなかった美女を相手にする幸せを得た。
由利は十七万円を得るにあたって,軽い相手で一人分を消化できた。
朝里は由利のセックスを聞きながら,光代との情交をするという希有な体験をした。
光代も他人の実際の交わりで十分に気分を高めたあと,同士であり,友人であり,自分のウィークポイントを知り尽くしている朝里によって,絶頂まで追い込んでもらえるという悦こびを得た。
そして,光代にはもう一つの喜びがあったのだが,それは他の誰も知らなかった。
長い夜は白みかけていた。
- 第3部 完 -
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