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序章 夢のあと

 寝返りを打った瞬間に目が覚めた。外が白み始めていた。朝か。
 あれ以来,今頃,目が覚めるようになったよな。

 あれからオレの頭の中には,あの女が棲み付いてしまった。現実感がなくて幻みたいだが,細部の記憶は逆に鮮明になってきている。
 あの時は,速い事態の展開に追いつけなくて,考える余裕もなかったし,判断も的確ではなかった。今から考えると惜しいことをした。後悔している。あんな,機会はもう二度とないだろう。
 今,思い出してみると,あの女は実はすごくいい女だったんだ。いま,オレと付き合っている女達と比較してみればすぐに分かる。どうして,あの時にもっとはっきり気が付かなかったのだろう。
 気が付いていれば,何か手だてはあったのかも知れないし,こんな虚脱感を味あうこともなかったかも知れないのに。
 オレの手からするりと逃げて行った獲物は,実は大物だったのだ。
 それにしても。あの女は何者だったのだろう.....

第1章 夢のはじめ(1)
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